2008年02月03日

Fairuz ー 小学生の頃から二十年に渡って探し求めたアラブの歌姫。

小学生の頃、というと今から約30年前になるでしょうか。NHKテレビで土曜日の7時20分頃から世界の話題を集めた番組を放送していました。番組名は忘れてしまったのですが、そのなかのワンコーナーに「世界のヒットソング」というのがあり、毎週楽しみにしていました。この「世界のヒットソング」、本当に「世界の」でした。田舎の小学生が普通耳にする音楽といえばテレビから聞こえてくる歌謡曲だったり、ラジオから聞こえてくる英語圏をはじめとする西欧世界の音楽ばかりでした。が、このコーナーで紹介されるのは西欧世界の音楽もあればアジアの音楽もあり、南米の音楽もありとそれはバラエティーに富んでいました。しかも民族音楽ではなく、一般大衆が耳にする大衆音楽、つまり世界各地の"ポピュラーミュージック"を聞くことができたのです。子供ながらに「今日はどこの音楽なのかなぁ♪」と楽しみにしていました。(変なガキ(苦笑)。)

「世界のヒットソング」で紹介された音楽のほとんどは忘れてしまったのですが、10年以上にわたって頭から離れない曲がありました。メロディーからなにまで、放送されたシーンをはっきりと覚えています。それだけインパクトが大きかったということなのでしょう。

曲名は確か番組のなかでは「私のレバノン」と紹介されていたように覚えています。内戦の続く母国レバノンの平和への願いをテーマにした曲だ、というような説明がありました。そして、その曲のイントロが画面から流れはじめます。ステージにはスタンドマイクが1本。そこにイントロに乗り白い衣装に身をまとった女性が歩み寄ります。

♪ジャカジャーン、ジャカジャーン、ジャカジャカジャカジャカジャカジャーン
♪ジャカジャーン、ジャジャジャーンジャジャジャジャジャジャジャーン



「うわ!なんだこの前奏は!聞いたこともない前奏だ!こんな前奏で歌えるのかよ!」彼女は浪々と「私のレバノン」を歌い上げます。聞いたこともないまとわりつくようなアラブのコブシまわし。一節が終わる毎に観客から拍手と歓声が上がります。レバノンのようなところにもこんなに人気のある歌手がいるんだ、いったい世界にどれだけの大衆音楽があるのだろうと興味を持ち、ありとあらゆる音楽に偏見がなくなった瞬間でした。好き嫌いはありますけれども、僕が世界中の音楽を分け隔てなく聴けるようになったのはこの「私のレバノン」のお陰です。

しかし、歌手の名前はちっとも思い出せず、探す手がかりがまったくありませんでした。結局、それから二十年もの間、再びその曲を耳にすることはありませんでした。が、頭の片隅にこびり付いて離れることはありませんでした。

CIMG5233.JPG会社勤めをし始めてずいぶんと経ち、当時愛読していた「ミュージックマガジン」誌に、あるアラブ女性歌手の特集が掲載されていました。特集の中に曲名リストがあり、ある曲名が目に留まりました。「B'hebbak Ya Loubnan」。....「え?最後の単語、レバノンって読むのかな?....だとするともしかしてあのとき聞いた『私のレバノン』じゃぁないだろうか?」それから輸入CD屋さんを訪れる度その歌手のCDを探し、数ヶ月後にやっと手にすることができました。「私のレバノン」"らしき曲"は1曲目に収録されています。CDプレーヤーにCDを置いて再生ボタンを押すと聞こえてきたのは....

♪ジャカジャーン、ジャカジャーン、ジャカジャカジャカジャカジャカジャーン
♪ジャカジャーン、ジャジャジャーンジャジャジャジャジャジャジャーン


まさにあの曲「私のレバノン」に違いありません。その歌手の名は、Fairuz。「フェイルーズ」または「ファイルーズ」と日本語表記されることがあります。ここでは「フェイルーズ」と書かせていただきます。

それから数年経ったころ、僕の職場にチュニジア人の方が出張で訪れました。それで、歓迎会があったときに彼に「僕は世界中の音楽を聴くのが好きなんだけど、アラブの音楽は残念ながら聴く機会が少なくて。唯一知っているのはフェイルーズぐらいなんだよ」と言うと、彼は「え!何でフェイルーズを知っているの!?」と驚きの表情に。誰それ?ってリアクションが帰ってくるものと思っていたので意外でした。「つまりそれはカクカクシカジカで...」と先に書いたようないきさつを説明しました。すると彼、嬉しそうに「フェイルーズはチュニジアでも凄く人気があって、彼女がチュニジアでコンサートをしたときの観客動員数はチュニジア音楽史上最高の観客動員なんだよ」と今度はこちらが驚きの話を教えてくれました。更に「フェイルーズはレバノンはもちろんのこと、エジプトやアラブ圏ならどこでも超有名でみんな大好きなんだ」とも。言うなれば、アラブ歌謡の歌姫(ディーバ)なんですね。小学生のときにただ一度だけ耳にした「私のレバノン」。巡り巡ってチュニジア人と会話が弾むことになろうとは夢にも思いませんでした。

そして最近、また驚きのものを目にすることになりました。技術の進化は凄いですね。僕が小学生のときに見たフェイルーズの「私のレバノン」のビデオが、YouTubeにアップされているのを見つけました(喜)。「私のレバノン」だけではありません。こんなに映像がアップされています。彼女の人気の度合いは改めて語ることもないって感じです。

もう二度と「私のレバノン」の映像を見ることはないだろうと思っていたのに、三十年ぶりに目にすることができました。こんなに嬉しいことはありません。再生ボタンをポチッと押すと聞こえてきます。

♪ジャカジャーン、ジャカジャーン、ジャカジャカジャカジャカジャカジャーン
♪ジャカジャーン、ジャジャジャーンジャジャジャジャジャジャジャーン



白い衣装をまとったフェイルーズが、スタンドマイクに歩み寄ってきます。そしてレバノンの平和を願う歌を浪々と歌い上げます。観客はその歌声に共感するかのように一節ごとに拍手と歓声を送ります。

僕の"世界の音楽(ワールドミュージック)好き"は、小学生のときに目にしたこのシーンから始まりました。

そして、三十年がたった今でも政情不安定なレバノンをはじめとする周辺諸国ののニュースを目にする度、この曲が頭に浮かんでくるのです。




posted by IKAWA at 23:20| Comment(8) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
雪中500m歩行お疲れ様です IKAWAさん (笑)

中島みゆきをほとんど知らなくてもフェイルーズさんを知っている方がかなりマニアックだと思われです。
私は全然知りませんでしたが、なんかすごい迫力ですねぇ..イスラム版演歌とでも言ったいいのでしょうか、コブシはまわるし、力強い声だし、歌詞の意味が全然わからなくても、確かに惹きこまれる歌唱力ですね。
Posted by たすけ at 2008年02月04日 02:55
IKAWAさん、こんばんは。
フェイルーズ、名前は聞いたことがありますがCDは持ってません。アラブ圏で顔出しの歌姫というとやはりレバノン、シリア等の地中海沿岸の比較的緩やかなイスラム国家出身の子が多いですね。

アラビア語は喉の奥から発音する言語なので女性の歌声も独特の太い声になります。
我が家にも中東で買ったアラビア語のCDがいっぱい転がってますが奥さんには不評なので部屋ではかけません(笑)
Posted by kashiwan at 2008年02月04日 22:40
たすけさん、こんばんは。

そうでしょう。とてもマニアックでしょう(笑)。

このコブシまわしは演歌というよりも、コーランからきているのではないかと思います。イスラム圏の大衆音楽はコーラン的コブシ回しが多く聞かれます。僕は落ち着けるのでこういうコブシ回しは大好きです。

たすけさんの心にそれだけ響いたということは、小学生時代の僕にどれだけ衝撃的だったかおわかり頂けたでしょうか。
Posted by IKAWA at 2008年02月05日 00:24
kashiwanさん、こんばんは。

さすがですねぇ。フェイルーズの名前を聞いたことがあると言う方は、本文に出てきたチュニジア人に続いてkashiwanさんが僕の人生で二人目です(笑)。

確かにアラブ圏の音楽を自宅でかけるのは少し躊躇するところがありますね。別に悪いことをやっているわけではないのですが、キリスト教と比較して日本にあまり馴染みのない文化ですので、周りの目を気にしてしまいますね。ヘッドフォンをして聞きましょうか(爆)。
Posted by IKAWA at 2008年02月05日 00:30
IKAWAさん、堪能しました。
 私も中東好きで、とくにエジプト方面。
カミさんはトルコ(カッパドキア)に行きたがってるんですが、なかなか機会を得ずです。
 そこで、松戸のエジプト料理店↓昼はDVDでベリーダンス、週末にリアルショーがあります。
http://www.kanshin.com/keyword/1124252
Posted by 横山 at 2008年02月06日 14:39
昨日、フェイルーズさんの「私のレバノン」を
見てから寝たのですが夢に出てきました(笑)
今も見ました。
レバノンの平和への願いが伝わってきますね。
ワールドミュージック系?だと
私は”Dick" Lee” が好きなんですが
マニアックですかね?

Posted by えいじ at 2008年02月06日 22:25
横山さん、こんばんは。

中東は日本にとってまだ文化的に馴染みの薄い地域ですので、異文化好きの僕にとっては興味のある地域です。ただ、政情不安定な国が多いので(ただ単にそういうニュースしか日本で流れないからそういう印象を持っているだけかも知れませんが)、行く機会に恵まれません。

松戸にエジプト料理店があるとは知りませんでした。リアルでベリーダンスが見られますか!こちらはいつでも行く機会がつくれそうです(笑)。
Posted by IKAWA at 2008年02月06日 23:00
えいじさん、こんばんは。

フェイルーズが夢に出てきましたか!これは重症と思われます。さっそくCDを探しに出かけて下さい(笑)。

Dick Lee はさほどマニアックではないと思いますよ。僕も何枚かCDを持ってます。実は、いつか書こうと思っていますが、Dick Leeと親交があった日本のある女性シンガーの大ファンで、一時期ファンクラブに入ってオッカケをしていたことがあります(汗)。
Posted by IKAWA at 2008年02月06日 23:07
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